【相続税】相続財産から控除できる葬式費用について詳しく解説します!

こんにちは、つるかめ税理士事務所の平岡です。
今回は、相続財産から控除できる葬式費用について詳しく解説します。

【この記事のポイント】
■相続財産から控除できるものとできないものについて知る

■「お布施」や「心付け」など、領収書が発行されないものであっても葬式費用に該当する。ただし、支払先や金額等はメモしておく
■葬式費用関連で支出した場合には必ず支払先や金額等をメモしておく

はじめに

被相続人のお通夜・葬儀・告別式から火葬・埋葬・納骨に至るまでに一般的に必要となる葬式費用についても相続税の計算上、債務と同様に相続財産から控除することができます。

※ 相続財産から控除できる債務については「【相続税】相続財産から控除できる債務について詳しく解説します!」を参照してください。

ただし、宗教によっても葬式の形態は変わるため、「葬式費用」を一律に定義することは困難であるため、どのような支出が該当するについて法律では具体的に定められていません。

そこで、相続税法基本通達において、次のような費用が葬式費用として控除できると定められています。(相続税法基本通達13-4)

【相続税法基本通達における葬式費用】
(1)火葬・埋葬・納骨費用、遺体・遺骨回送費用(仮葬式と本葬式を含む)
(2)葬式に際し施与した金品で相当程度と認められる費用(読経料など)
(3)葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うもの(通夜などの費用)
(4)死体捜索や死体・遺骨の運搬費用

一般的な理解として、お通夜・葬儀・告別式から火葬・埋葬・納骨に至るまでに一般的に必要となる葬式費用、飲食費、お布施などが該当します。

【つるかめノート:葬式費用は相続発生後の支出で債務にも該当しないのになぜ控除できる?】
相続税の計算上、相続財産から控除ができるのは「被相続人の死亡時点に確定している債務」が対象となっています。この理屈からいくと、葬式費用は相続開始時に現存する被相続人の債務ではないため、控除できないのではないかとも考えられます。
しかし、葬式費用は、被相続人の死亡に伴って必ず支出されるものであり、一般常識的に考えても、その費用負担は相続財産の中から支出されるものであるということを考慮し、相続税の計算上控除できることとされています。

相続財産から控除できる主な葬式費用(3つ)

①(お寺さんへ)お布施・戒名代・お車代
お布施とは、葬儀や法要などでお経をあげてもらった僧侶に対して感謝の気持ちでお渡しする金銭のことです。
また、仏教では亡くなった際にお坊さんから仏弟子になった証として名前をつけてもらいます。これを「戒名」といいます。
お布施や戒名代は感謝の気持ちで渡すものであるため、領収書は発行されませんが、相続税法上の「葬式費用」に該当します。
ただし、後に税務調査があった時のために、「お寺の名称」「所在地・連絡先」「金額」「日付」「目的」など、メモで結構なので、しっかりと残しておくようにしましょう。

② 心付け
日本では、葬儀費用としてかかるものとは別に、火葬場のスタッフやマイクロバスの運転手などに、お礼として「心づけ」を渡すという風習があります。
これらの「心付け」は領収書が発行されませんが、相続税法上の「葬式費用」に該当します。
ただし、注意したいのはその金額で、葬式費用と認められるものは「常識の範囲内」のものとなります。
あまりにも高額であれば、場合によっては、税務署から「贈与である!」として、もらった人に贈与税が課されてしまう可能性もありますので、「心付け」は常識の範囲内で渡すようにしましょう。
また、お布施などと同様、「心づけ」についてもの「金額」と「相手先」、「支払日」などをメモに残しておきましょう。

③ 会葬御礼費用
会葬御礼とは、通夜や葬式の当日に参列してくれた方に対するお礼の品で、香典の有無に関わらず、参列者全員に同じものを用意して渡します。
一般的には、ハンカチ、お茶、のりなど500円〜1,000円程度の品物に清めの塩、あいさつ状を添えて渡すことが多いかと思います。
これらに要した費用も葬儀に直接要した費用であるといえるため、相続税法上の「葬式費用」に該当します。

【つるかめノート:「会葬御礼費用」と「香典返戻費用」に注意しましょう!】
会葬御礼費用は、相続税法上の「葬式費用」に該当し、相続財産から控除が可能です。
しかし、同じような性質を持つ香典返戻費用は、相続財産から控除できません。
この取り扱いの差は一体なんなのでしょう?会葬御礼費用と香典返しの性質について整理してみたいと思います。
会葬御礼費用は、お葬式に参列してくれたことに対するお礼として、葬儀当日全員に対して渡すものです。
香典返礼費用は、香典を頂いたお礼として、忌明けなどに香典をくれた人に対して送るものです。
香典返戻費用が葬式費用として控除できないのは、「香典(収入)については課税しないから、そのお返しにかかった費用(香典返戻費用)についても相続税の計算上は相続財産から控除しませんよ!」という考え方です。
したがって、会葬御礼費用という名目だったとしても、その実態が香典返しの性格をもつものであれば香典返戻費用として扱われ、その費用は控除できないため注意してください。その支出の名目ではなく、どのような費用かという点がポイントとなります。

相続財産から控除できない主な葬式費用(3つ)

① 香典返戻費用
葬式において、一般的に参列者から香典を受け取ることがあるかと思います。
香典返しは、その受け取った香典のうち約半分ほどのお金を目安に品物のお返しを行うものです。
香典は遺族が葬儀参列者から受け取る金品であるため、被相続人の相続財産にならず、常識の範囲内であればその受け取った遺族についても所得税や贈与税はかかりません。
したがって、香典を課税しないから、そのお返しにかかった費用についても相続税の計算上は控除しないという考え方です。

② お墓、仏壇・仏具の購入費用
お墓は確かに納骨のために必要なものではありますが、葬式自体とは直接関係なく「葬儀を行う際に必須も費用」とは言えないため、墓地の購入費用は葬式費用には該当しません。

<つるかめノート:お墓は生前に買って節税しよう!!>
お墓や仏壇などは、非課税財産として課税対象になりませんが、相続開始後に購入しても、その費用を相続財産から控除することもできません。
よって、生前に購入しておけば、その購入費用分だけ現金などの財産が減りますので、相続税を節税することができます。

③ 法会に要する費用
法会に要する費用には、初七日、四十九日、一周忌などが該当し、これらの費用は、葬儀に伴い通常支出される費用ではありませんので、葬儀費用には含まれません。

<つるかめノート:相続税の申告の際には、葬儀社からの領収書を必ず確認>
初七日法要については告別式等と同時に実施する場合、初七日法要にかかった費用は葬式費用として控除できませんので、葬儀社からの領収書等を確認して、相続税の申告の際には葬式費用から除くことに注意してください。
ただし、四十九日等に遺骨をお墓に納めることとなりますが、実施の際の納骨費用(石材店に支払った費用)は葬式費用に含めることができます。

④ 医学上または裁判上の特別の処置に要した費用
例えば、死亡解剖に要した費用等についても、葬式とは関係がありませんので葬式費用には含まれません。
ただし、死体捜索や死体・遺骨の運搬費用は葬式費用に含めることができます。

税務上問題となる葬式費用(場合によっては控除可能)

① 供花(くげ)代(生花・花輪)
それぞれの地域や風習によって供花(生花・花輪)代の負担に関する考え方は異なり、喪主が負担する場合もあれば、喪主以外の相続人が負担するべきといった考え方もあるようです。
喪主が負担する供花代は、葬式にかかせない費用に該当すると考えられるため、葬式費用として控除可能と思われますが、喪主以外の親族が負担する供花代は、葬儀費用とは言えず控除できないとされています。


② 位牌
位牌は、葬儀の際に作成し、祭壇や仏壇でお供えされる仏具です。
位牌が相続税の計算上、葬式費用として控除可能かどうは位牌の種類によって変わってきます。

【位牌の種類】
イ 白木位牌
白木位牌は、故人が亡くなってから最初に作るものです。
主に葬儀から四十九日の法要が明けるまで使用する仮位牌で、法要後には本位牌と取り替えます。なぜわざわざ仮の位牌を使うのかというと、日本では亡くなってから四十九日は魂がさまよっている状態で、成仏していないと考えられているためです。
ロ 本位牌
本位牌は、四十九日の法要が明けた後に白木位牌と取り替えて使用するものです。
自宅の仏壇や祭壇に安置し、毎日供養することになります。

白木位牌は、お通夜や告別式といった葬儀関係の儀式で、必ず祭壇にお祀りされます。
このため白木位牌の製作費用は、葬儀に直接関係するうえ、不可欠なものと考えられますので「葬儀に直接的に必要な費用」として相続税法上の「葬式費用」に該当します。
他方で、本位牌については、故人の四十九日以降に、それまでの白木位牌に替えて故人をお祀りするために作られ、葬儀に直接的に必要な費用とはいえず、相続税法上の「葬式費用」に該当しません。

まとめ

葬祭場などに支払ったときの領収書を必ず保管したしておきましょう。

ただし、お布施や心付けなどのように領収書がもらえないようなものについては、支払いを記録したメモでも構いませんので、「支払い先」、「支払った日付」、「支払った金額」、「支払った内容」この4点を必ず記録しておいてください。

メモがあれば、後から税理士などの専門家にそれらの支出が相続税法上の葬式費用に該当するかを確認することができます。

※ この記事は公開日現在の法令に基づいて作成されています。

この記事を書いた人

tsurukame