【生前対策】事例で解説!「争族」を防ぐために今できる相続対策

はじめに

こんにちは、つるかめ相続税理士事務所の平岡です。

相続対策と聞くと、「相続対策は金持ちが行うものでしょ」「うちはお金がないから関係ないよ」と思っていませんか?

実は、相続対策は、富裕層だけが行うものではなく、すべての家庭において必要なものです。

その対策とは、具体的には「遺産分割対策」です。

相続対策には、大きく分けて、「遺産分割対策」「納税資金対策」「節税対策」がありますが、その中でも圧倒的にこの「遺産分割対策」が重要であると思っています。

ではなぜ、すべての家庭で必要なのでしょうか?

私の経験上、「争族」(遺産を巡って親族が争うこと)となるのは遺産の多い少ないはあまり関係ないように思います。

仮に、遺産が少なく相続税が発生しないご家庭であっても残された家族にとってはその遺産というのは重要な財産には変わりありません。

日本では、親が生きているうちは相続や遺産の話をするのはタブーとされる風潮があります。

相続は財産を残す人だけでなく、相続人も含んだ大きな問題です。相続人との話し合いの場を設け、お互いの意思を確認しておくことが必要です。

財産を残す人の意思も尊重され、相続人も納得のいく相続というのが本当の意味で「理想の相続」といえるのではないでしょうか。

今回は、理想の相続を実現するためにどのように「遺産分割対策」を行えばいいかについて解説します。

【この記事のポイント】
■相続対策の中で「遺産分割対策」が一番重要である。
■遺産分割対策はお金持ちの家庭だけではなく、すべての家庭において必要なものである。
■財産目録を作成し、誰に財産を残したいかを明確にすることが必要
■遺産分割対策を怠ると「争族」に発展する可能性が高くなる
■遺産分割対策は専門家と長期間かけて行うことで、理想の相続に近づけることができる。

遺産分割対策

遺産の多い少ないかにかかわらず、仲の良かったご家族が遺産を巡って揉めることは珍しくありません。

まずはご自身の財産はどのようなものがあるかを把握し、それを誰にどのように引き継がせるかを決めることからはじまりましょう。

これを行うだけでも、亡くなった後に、相続人が遺産で揉める可能性はかなり減るのではないかと思います。

具体的には、次のように分割案を決めることになりますが、それぞれのご家庭の状況に応じて異なるかと思います。

【分割案】
・すべてを財産を売却して現金化し、法定相続分(又は平等)で分ける案
・家は長男、預金は次男など個々に分ける案
・誰か一人に集中して相続させる案

財産の分割案が決まったら、次は具体的に財産の洗い出しなどを行います。

【対策】
(1)財産の目録を作成する
自分の相続財産がどれだけあるのか、把握しておくことは重要です。
相続財産は、預貯金だけではなく、自宅や土地、車、株などの有価証券など経済的価値のあるものになります。
これらのすべてリストアップし、目録を作成しましょう。 
もし、借金や住宅ローンのような負債もあるならば、それも忘れず目録に入れておきましょう。

(2)相続人を確定する
相続財産の目録を作成したら、法定相続人を確認します。 
法定相続人が誰になるのか、順位はどうなるのか等についてしっかり検討するため、戸籍謄本や家系図などを取得しておくといいでしょう。

(3)遺産を分割しやすい状態にする
例えば、相続財産に土地や非上場株式など分けにくい財産が多い場合には、相続人間で遺産を分ける際に争いが生じる可能性があります。
生前にこれらの財産を売却して現金化するなどして、財産を分割しやすい状態にしておけば、容易に分けることができます。

(4)遺言書やエンディングノートを作成する
相続におけるトラブルを防ぐには、被相続人の思いを遺言として遺族、相続人に明確に伝えることが非常に重要です。 
遺言書やエンディングノートはその手段として最適です。
また、これらと併せて、相続人との話し合いの場を設け、お互いの意思を確認しておくことが必要です。

これらを踏まえ、具体的な事例を基に、どのようなトラブルが想定され、どのような対策をすればいいかなどを解説したいと思います。

事例で検討

【事例】
・父の財産の総額は2,900万円である。
・母は既に死亡している。
・長男夫婦は父の面倒を見るため、父の自宅で同居している。

 ⇒父は自分の財産をどのように子供達に残すか?
【想定されるトラブル】
長男は家族もいるため、父が亡くなった後も自宅を相続し、そのまま住み続けたいと思っています。
長男としては、同居し父の面倒をずっと見てきたので、他の財産はいらないので自宅は相続してもいいだろうと考えています。
ところが、次男が自分の相続分(1/2)の1,450万円(2,900万円×1/2)は相続する旨を主張しています。
自宅の評価額は2,000万円であるため、長男が自宅を相続した場合、次男は900万円しか相続できないため、次男は納得しないので、長男はそのまま自宅を相続するのは難しそうです。

このままでは、父が亡くなった後、長男と次男は争うことになってしまいそうです。さて、父はどのような対策をすべきでしょうか?

【対策】
① 家族で話し合う
何より重要なのは財産を遺される方の意向で、誰にどんな財産を遺したいのかをしっかりと決めておくことです。
家族で話し合う場を設け、その意向を相続人に伝え、理解を求めることが必要です。

【本ケースでの対応】
父は亡くなった後、「自宅」についてどうしたいのかをはっきりと決めておかないと、兄弟間の「争族」の原因となります。
・自分の面倒を見てくれた長男家族に自分の死後も住んでもらいたいのか?
・売却して兄弟仲良く現金で分けてほしいのか?
など、父の意向をしっかりと子供達に伝え、理解してもらうことに努めることが重要です。それを形にする手段として遺言書を作成するという方法も有効です。

② 分けにくい財産を分けやすくしておく
不動産のように相続人の間で分けにくい財産が多い場合には、遺産分割でもめる原因となります。
あまり使ってない土地や相続後に相続人が使わないであろう土地は、生前に売却し、現金にしておきます。

【本ケースでの対応】
財産の中に「畑」がありますが、長男、次男が相続後に使用する見込みがない場合には タイミングを見計らって売却し、現金化すべきと考えられます。
不動産価額は、常に変動しています。切羽詰まって売却すると、足もとを見られ満足のいく価額で売却できないことがありますので、早めに準備しておく必要があります。

③ 代償分割
相続人の間で引き継ぐ財産の差があまりにも大きいと、相続争いになる可能性が高まります。この不公平を解消するための方法として「代償分割」という方法があります。
代償分割とは、相続財産を多く引き継いだ相続人が自分の財産から他の相続人に金銭などを渡す方法です。

【本ケースでの対応】
「代償分割」を考えるのであれば、長男が自宅を相続する代わりに、次男にお金(代償分割金)を払うということになります。
つまり、長男は評価額2,000万円の自宅を相続する代わりに、次男の法定相続分に相当する1,000万円を現金で支払うことになります。

不動産を、長男と次男の共同名義にするという方法もありますが、これはおススメしません。不動産は売却や処分をする際に、名義人全員の承諾が必要となり、兄弟間の仲が良好なうちはいいですが、仲が悪くなって次男が売却すると言い出した際には、トラブルになる可能性が高いからです。

④ 生命保険の活用
生命保険金は、原則として受取人の固有の財産となるため、遺産分割の対象となりません。
つまり、財産を残したい人を受取人にして契約をしておけば、確実にその人に残すことができます。
また、仮に受取人が相続を放棄したとしても、保険金を受け取ることになります。

【本ケースでの対応】
仮に、父が自分の死後に兄弟間の争いを防ぐために自宅を売却して現金化し、それを長男と次男で均等に分けることを望んだ場合であっても、これまで自分の面倒を見てくれた長男に対し、別に何かを残してやりたいと思うのは親心としては当然です。

そのような場合には、長男を受取人にした生命保険契約を締結します。

この保険金については、分割が必要な財産には含まれないので、長男に支払われた保険金について次男は自己の権利を主張できません。

しかし、金額が大きすぎる場合などは「特別受益」として、財産に含められるケースもありますので注意が必要です。

まとめ

この記事を読んでいただいて、自分の財産の行き先を生前に決めておく必要性というのを十分に感じていただけたのではないかと思います。

それは、もはやお金持ちの方だけが直面する問題ではなく、ごくごく普通のご家庭においても発生し得る問題です。

相続人が多ければ多いほど、その相続人がおかれた状況や考え方が異なるので、争族になりやすい傾向にあります。

今からでも、遅くはありませんので対策をされることをおすすめします。

当事務所でも、財産の洗い出しや相続税の試算、生前贈与、遺言書の作成、財産の分割案のアドバイスなど、みなさまの意思を尊重した相続対策のお手伝いをさせていただいております。

この機会に、相続対策を始めませんか?

ぜひ、当事務所にご相談ください。

※ この記事は公開日現在の法令に基づいて作成されています。

この記事を書いた人

tsurukame