【相続税】相続財産から控除できる債務について詳しく解説します!

こんにちは、つるかめ税理士事務所の平岡です。
今回は、相続財産から控除できる債務について詳しく解説します。

【この記事のポイント】
■相続財産から控除できる債務、できない債務について知る
■税務上問題となる債務(場合によっては債務控除できるもの)にはどのようなものがあるか
■債務控除ができる人は「相続人」と「包括受遺者」に限定されている

はじめに

相続税は不動産、現預金などプラスの財産に対して課税されますが、亡くなった時点に借入金などの債務がある場合には、プラスの財産から控除することができます。これを「債務控除」といいます。

ただし、借金などの債務であればどんなものでも差し引けるわけではなく、次のような条件を満たした債務のみ控除するこができます。

【相続税で債務控除が認められる債務】
① 被相続人の債務で相続開始の際に、現に存するもの
➁ 確実と認められるもの

つまり、債務控除ができる債務には、被相続人の債務で相続開始日時点(=原則、被相続人の死亡日)で現実に存在するものでなくてはいけません。

債務控除できる主な債務(6つ)

実務上、頻出する債務控除できる債務について6つ紹介します。

① 金融機関からの借入金
金融機関など第三者からの借入金は相続開始時の確実な債務であるため、亡くなった日の借入金の残高および未払利息(利息の未払分)は債務控除の対象となります。

② 未払い医療費
被相続人の治療費や入院費などで未払いのもの(被相続人が入院中に亡くなった場合など)を、相続人が支払った場合は、債務控除の対象となります。

【つるかめノート:所得税の医療費控除はどうなる?】
被相続人が亡くなる前には、医療費が発生しているのが一般的だと思われます。
医療費と聞くと所得税の医療費控除を思い浮かべる方は多いと思いますが、お客様から「被相続人の医療費は、被相続人の所得税の確定申告(亡くなった人の所得税の申告は「準確定申告」といいます。)で医療費控除の適用は受けられるのか」という質問をよくいただきます。
被相続人が亡くなる前に、被相続人自身が医療費の支払いした場合には支払分については被相続人の準確定申告で医療費控除の対象になります。
一方、亡くなった後に支払われた医療費については、通常は相続人などの親族がその医療費を支払うことになります。
その場合には、被相続人の準確定申告では医療費控除の適用は受けられません。
しかし、その医療費を支払った親族が、被相続人と一緒に生活(税務上は「生計一親族」といいます。)していた場合には、相続人の確定申告で医療費控除が受けられます。

③ 未払い固定資産税
被相続人が固定資産税を納付する前に死亡した場合には、その不動産を相続した人が支払うこととなります。その相続人が支払った分(未払いの固定資産税)については、債務控除の対象となります。

【つるかめノート:共有不動産の場合は全額控除はできませんので注意が必要です!】
被相続人と被相続人以外の者が共有の不動産の固定資産税については、その被相続人が所有している持分の割合に応じて債務控除の対象となります。
例えば、30万円の固定資産税を死亡後に納付した場合において、被相続人の共有持分が1/2だったときは、15万円のみ債務控除の対象となります。

④ 準確定申告に係る所得税・消費税
被相続人の準確定申告に係る所得税及び消費税も債務控除の対象となります。

【つるかめノート:準確定申告って何?】
相続開始の日から4か月以内に行う被相続人の所得税の確定申告のことで、被相続人が死亡した日までの所得について申告・納税します。
申告書類の作成方法は、通常の確定申告とほぼ同じですが、相続人の氏名等を記載した「付表」が必要になります。
相続開始から4か月の時点で、遺産が未分割であるときには、相続人が法定相続分に従って、被相続人の所得税を納めることになります。

⑤ 未払い住民税
被相続人が亡くなる時期によっては、住民税額が確定している場合としていない場合がありえますが、相続税の債務控除は、被相続人の死亡時に住民税の額が確定しているか否かにかかわらず、被相続人の住民税が未払いになっていて相続人が代わりに支払うものが対象となります。

⑥ 預り敷金・保証金
賃貸不動産を所有している場合には、原状回復費用を補填する目的で借主から入居の際に預り敷金(保証金)を預かる場合が多いと思います。
借主の使用状態が良く、原状回復費用を要しない場合には、貸主はその敷金を全額借主に返還しなければなりません。
したがって、貸主にとってはいずれは返還しなければならない「債務」ですので、被相続人の死亡時に預り敷金がある場合には、相続税申告の際に債務控除の対象となります。

債務控除できない主な債務(5つ)

実務上、頻出する債務控除できない債務について5つ紹介します。

① 団体信用生命保険付きの住宅ローン
通常、団体信用生命保険(通称、団信)が付いているような住宅ローンには、被相続人の死亡と同時に保険金が銀行に支払われ、住宅ローンの返済に充てられますので、債務控除の要件とされている「相続開始時においての確実な債務」に該当せず、債務控除の対象とはなりません。
ちなみに、団信は死亡保険金が相続人には支払われませんので「みなし相続財産」にも該当しません。

② 墓石や墓地を買ったときの未払金
被相続人が生前に、墓石や墓地を購入し、その代金を支払わずに亡くなった場合の未払金については、債務控除の対象となりません。
墓石や墓地は相続税法上の非課税財産で相続税がかからないため、これらの購入に係る未払金も債務控除の対象にしないという考え方です。

③ 弁護士や税理士などに支払う報酬
相続税の申告を税理士に依頼した場合に支払う報酬などは、被相続人の債務には該当しないため、債務控除の対象とはなりません。

④ 前受家賃
通常、家賃は当月分を前月末までに支払うのが一般的です。
例えば、被相続人が6月10日死亡し、6月分家賃を5月末までに支払を受けた場合、被相続人の準確定申告において、5月末に支払いを受けた家賃を「前受家賃」として収入計上しないで、負債に計上することがあります。
所得税の準確定申告で「負債」計上するものであれば、相続税の計算上でも「債務」として債務控除の対象になるのではないかという疑問が生じますが、相続税の計算上、相続財産から控除できる債務は、あくまでも被相続人が死亡した時にあった債務で確実と認められるものに限られます。
そういう意味において、被相続人が亡くなった場合でも、借主に前払いを受けた6月分の家賃を返すようなことは通常せず、被相続人が亡くなった時点で、前受家賃の返還義務はありませんので、確実な債務には該当せず、相続税の債務控除の対象となる「債務」には該当しません。

⑤ 遺言執行費用
遺言執行費用は、相続財産の管理に関する費用であり、相続開始の際に現に存する債務ではないため、債務控除の対象になりません。

【つるかめノート:遺言執行費用にはどのようなものがあるの?】
遺言執行費用を例示すると、次のようなものがあります。
 イ 遺言の検認手続費用
 ロ 相続財産目録調整費用
 ハ 相続財産の管理費用
 ニ 遺言執行者に対する報酬及び家庭裁判所が選任した遺言執行者の職務代行者に対する報酬
 ホ 遺言の執行に関連してなした訴訟費用

税務上問題となる債務(場合によっては債務控除できる債務)

① 親族からの借入金
法律上は、被相続人の死亡時に確定していた被相続人の借入金は、仮に貸し手が親族であろうと、債務控除は可能とされています。
しかし、親族からの借入れは、金融機関からのそれとは異なり、返済期日、返済日、利息などの取り決めがしっかりとなされていない場合があります。
そのような場合、税務署からこれは確実な債務には該当せず、親族からの実質の贈与ではないかと指摘されることがあります。
このような指摘を受けないためにも
 イ 借入の経緯をしっかりと説明できるようにしておく
 ロ 金銭消費貸借契約書を作成しておく(利息についても明記する)
 ハ 返済の事実がしっかりとわかるように現金の手渡しではなく、金融機関に振込む
などの対策をしておきましょう。

② 連帯債務
連帯債務とは、数人の債務者が同一の内容の債務について各自独立に全部の給付をなすべき債務を負担することをいいます。
何を言っているかよくわかりませんよね。具体例で説明します。
銀行は夫と妻の二人を連帯債務者として3,000万円を貸し付けました。すると、夫と妻は共同で3,000万円を銀行に返済していくこととなります。
連帯債務の場合、銀行は夫と妻のどちらに対してでも「3,000万円すべて返済せよ!」と請求することができます。
つまり、夫が返済をしようがしなかろうが銀行は妻に対しても借入金の返済を求めることができるのです。
この例で、連帯債務者の夫が亡くなった場合に、この3,000万円の債務を相続税の計算上、控除ができるのかという問題が生じます。
これについて、被相続人の負担すべき金額が明らかとなっているときは、その明らかになっている部分の金額が債務控除の対象となります。

③ 保証債務
保証債務とは、債務者が債務を返済できない場合に、その債務を肩代わりすることをいいます。こちらも具体例で説明します。
例えば、債務者Aさんが新規の事業を始めるため、銀行から3億円を借り入れしました。
銀行としては、Aさんが事業に失敗し返済できなかった時のために、Aさんに保証人を要求しました。
Aさんは友人のBさんに保証人を頼み、Bさんは快諾しました。
Aさんの事業が上手くいかず、返済に困窮し、債務を返済できない状況になりました。
銀行は保証人であるBさんに債務の返済を要求しました。このときのBさんが支払うべき債務が保証債務です。
そしてBさんは銀行に債務を支払ったあとAさんに返済を求めることができます。これを「求償権」といいます。
保証債務のポイントは、主たる債務者(上記のAさん)が返済を履行しない場合に、はじめて保証人(上記のBさん)に返済を請求できるという点と保証人に求償権がある点です。一方、連帯債務の場合は、いきなり連帯債務者に返済を請求できます。ここが、保証債務と連帯債務の大きな違いになります。

それでは、話を戻して、被相続人が他者の債務の保証人となっているケースで債務控除ができるかについては、この保証債務は債務控除の対象にはなりません。ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にある場合で、その者に請求することができないようなときはその弁済不能部分については債務控除の対象となります。

債務控除ができる者は「相続人」と「包括受遺者」のみに限定

相続税の債務控除は誰でもできるわけではなく、次の2者に限られています。

【債務控除ができる者】
① 相続人
➁ 包括受遺者

つまり、「相続人」と「包括受遺者」以外の人は、相続や遺贈により財産を取得しても債務控除が出来ません。

【参考:相続や遺贈により財産を取得したが債務控除できない者】
① 相続を放棄した人
相続を放棄した人は、原則として被相続人の財産を相続しません。
したがって、プラスの財産を相続せず、相続税が課税されませんので、債務などのマイナスの財産も控除できません。

② 特定受遺者
特定遺贈では、対象財産の贈与を受けるものであって相続債務まで引き継ぐというものではありません。
よって、特定受遺者には債務控除が認められておりません。

③ 制限納税義務者
制限納税義務者は日本国内にある財産のみ相続税が課されますので、その日本国内の財産に関係する債務のみ債務控除が可能です。
したがって、全く債務控除が認められていないというわけではなく、その債務控除は制限されるということになります。
(日本国内財産に係る債務の例)
・日本国内の不動産を相続した場合に死亡後に支払った死亡年にかかる固定資産税
・日本国内のアパートの壁を塗り替えた代金が未払いだった場合の代金
・日本国内にある住宅の建築ローンが残っていた場合のそのローン
【つるかめノート:包括受遺者ってどんな人?(特定受遺者と包括受遺者)】
遺言書の内容は遺言者10人いれば、10通りの書き方があります。
例えば、次のような文面の遺言書があったとします。
①「○○市にある不動産をAに相続させる」
②「私の財産の1/2をAに相続させる」
どちらも、相続財産をAに相続させるという内容ですが、①の文言は、ある財産を特定し、その財産をAに相続させるというものであり、他方②の文言は、何を相続させるかは具体的には特定していないものの、すべての遺産の価値を金額などの数値に換算して、その総額の1/2をAに相続させるという内容となっています。
遺贈の種類として、上記①のような書き方がされた遺贈を「特定遺贈」といい、②を「包括遺贈」といいます。
特定遺贈により、財産をもらった人を「特定受遺者」といい、また、包括遺贈により、財産をもらった人を「包括受遺者」といいます。

※ この記事は公開日現在の法令に基づいて作成されています。

この記事を書いた人

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