【贈与税】贈与税の申告から納税まで一連の手続き解説します!

はじめに

個人から個人に財産が贈られるときに発生する税金が贈与税となります。

贈与税とは誰が、どんな時に支払うのでしょうか?

贈与税の仕組みをきちんと理解しないまま贈与をしてしまうと、後になって「税金がかかることを知らなかった」「こんなに税金が高いとは思わなかった」など思わぬトラブルに繋がる可能性もあります。(贈与税は他の税金に比べて非常に負担が重いです。)

今回は、贈与税とはいつ、誰が、どんな時に支払い、どのように手続きをすればいいのかについて、実務上の注意点も踏まえて解説したいと思います。

【この記事のポイント】
■贈与税は財産をもらった人が、確定申告期間中に税務署に申告書を提出する。
■贈与税の申告方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」がある。
■相続時精算課税の適用を受ける場合には、提出期限までに必ず申告書を提出する
■一括で贈与税の納付が困難な場合には、分割で納税する延納制度を検討する。

贈与税を申告する人

贈与税は1月1日から12月31日までの1年間を単位として、財産をもらった人(以下「受贈者」)に課税され、その受贈者が申告する必要があります。

したがって、贈与をした人(以下「贈与者」)は特に手続きは不要です。

贈与税の申告方法

贈与税の申告方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2通りがあります。

基本的には、暦年課税が適用されますが、一定の要件を満たせば相続時精算課税を選択することができます。

それぞれ、メリット・デメリットがあり、例えば相続時精算課税を選択しますと、その贈与者からの贈与については、暦年課税に戻れないなどの制約もありますので、後になって後悔しないように、財産の種類、金額によってどちらを選択すべきかをしっかりと検討する必要があります。

なかなか、ご自身で判断ができないようであれば、税理士に相談しましょう。

暦年課税

贈与税は1月1日から12月31日までの1年間を単位として課税されますが、その1年間に受けた贈与財産の額が基礎控除額の110万円を超える場合には、税額が算出されますので、贈与税の申告書の提出が必要になりますが、基礎控除額以下の場合には、申告書の提出は必要ありません。

贈与税の税率は、贈与された金額が高くなるほど税率が高くなる「累進課税」方式となっています。

また、両親や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合は、優遇された税率(「特例税率」といいます。)が適用されます。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、贈与をした年の1月1日現在において、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与について、子・孫の選択により利用できる制度です。

この制度には、2,500万円の特別控除があり、同一の父母または祖父母からの贈与において、限度額(2,500万円)に達するまで何回でも控除することができます。つまり、2,500万円までの贈与については贈与税がかからないことになります(ただし、相続時精算課税制度を利用した場合、贈与税の基礎控除(110万円)の利用はできません)。

また、贈与額が2,500万円を超えた場合には、超えた額に対して一律20%の贈与税が課税されますが、その贈与税は相続時に相続税額から差し引かれ、相続税額が少ない場合は差額が還付されます。

ただし、多額な特別控除があり、暦年課税より有利なように思えますが、この制度の内容としては、その名前にもあるように「相続時精算」ということです。つまり、贈与時には多額の特別控除により軽減された贈与税又は無税となるが、その後に贈与者が亡くなった時にこの贈与財産の価額を贈与者の相続財産に加算して相続税額を計算するというものです。

暦年課税と相続時精算課税は贈与者ごとに選択制となっていますので、例えば父からの贈与については相続時精算課税を選択し、母からの贈与には暦年贈与を適用するということができます。

ただし、相続時精算課税を1度選択したらその人からの贈与については、ずっと相続時精算課税となります。(取り消すことはできません)

また、注意点として、相続時精算課税制度の適用を受ける人は、特別控除の範囲内の贈与でたとえ納付税額がゼロの場合であっても、申告書の提出が必要になります。

相続時精算課税は、暦年課税と比較して贈与時には大きな節税になりますが、相続税で精算される仕組みとなっているで、相続税まで含めたトータルで考えた場合には、贈与財産や贈与時期によっては節税効果が薄くなることもあります。

【つるかめノート:相続時精算課税制度を適用する場合の注意点】
必ず申告期限(通常は3月15日)までに申告書を提出してください。
期限から1日でも提出が遅れると相続時精算課税制度の適用を受けられなくなります。
また、相続時精算課税の申告をすると、暦年課税に戻りたいと思って撤回しようとしてもできませんので、この制度を使うときには家族や専門家に相談してから使うようにしましょう。

贈与税の申告期限と納付期限

申告期限は、財産の贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日となっております。(曜日の都合で前後することもあります。)

また、納付期限は申告期限と同じで、財産の贈与を受けた年の翌年の3月15日となります。

申告書は、郵便や信書便による送付又は税務署の時間外収受箱へ投函する方法のほか、e-Taxを利用して提出(送信)することができます。

【つるかめノート:期限内に申告・納付しましょう!】
申告期限までに申告・納付をしなかった場合には、加算税と延滞税といういわば、ペナルティが課されます。
余分な支出を避けるためにも期限内に申告・納付するようにしましょう!

贈与税の確定申告と提出書類

贈与税の申告は、受贈者(財産をもらった人)が住んでいる住所を所轄する税務署に暦年課税、相続時精算課税の課税方法によって、申告期限までに次の書類を提出する必要があります。

暦年課税

【暦年課税の提出書類】
・申告書(第一表)

※暦年贈与には、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与を受けた場合、一般の贈与よりも税率が低えられる「特例税率」を適用することができます。
その場合には、その贈与財産の価額から基礎控除額(110万円)を差し引いた後の課税価格が300万円を超えるときは、戸籍謄本など、贈与を受ける者の氏名、生年月日、その受贈者が贈与者の直系尊属に該当することを証する書類を添付しなければなりません。
ただし、過去にこの書類を添付して贈与税の申告書を提出した場合には、再度申告書を提出するときに、添付書類を省略することができます。

相続時精算課税(初年度)

【相続時精算課税の提出書類】
・申告書(第一表・第二表)
・相続時精算課税選択届出書
・戸籍謄本又は抄本(受贈者の氏名、生年月日、受贈者が贈与者の直系尊属であることを確認するため)
※ 戸籍謄本又は抄本は贈与があった日よりも後に作成されたものを提出する必要があります。
【つるかめノート:添付書類が少なくなりました】
令和元年分の申告までは、受贈者、贈与者の住所等を証明する書類として戸籍の附票や住民票を提出する必要がありましたが、令和2年分以降は不要となりました。

納税方法

贈与税の確定申告が終わったら、納税をする必要があります。次のような納税方法があります。

【参考:国税庁HP「No.4429 贈与税の申告と納税」】

【納税方法】
① 現金で納付
現金に納付書を添えて、金融機関か住所地等の所轄の税務署の納税窓口で納付します。納付書(一般用)は、税務署又は所轄の税務署管内の金融機関に用意されています。
➁ e-Taxで納付(参考「国税庁」)
自宅等からインターネットをして納付できます。
③ クレジットカード納付
インターネットを利用して専用のWeb画面から納付することができます。
④ コンビニで納付【参考:国税庁「No.9209-2 コンビニ納付(QRコード)」】
国税をコンビニエンスストアで納付することができます。

一括で納税できない場合

贈与税もほかの税金と同じく金銭で一時に納めるのが原則です。
しかし、一度に多額の納税をすることが難しい場合には、延納という納税方法があります。これは一定の条件の下に5年以内の年賦により納税する方法です。

【延納するための要件】
延納を受けるには、次のイロハのすべてに当てはまることが必要となります。
イ 申告による納付税額が10万円を超えていること
ロ 金銭で一度に納めることが難しい理由があること
ハ 担保を提供すること
ただし、延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下の場合、担保は必要ありません。
【延納するための手続き】
贈与税の納期限までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して所轄税務署長に提出することが必要です。

※ この記事は公開日現在の法令に基づいて作成されています。

この記事を書いた人

tsurukame