【譲渡所得】譲渡所得の主な特例とその適用のポイント

【この記事のポイント】
■主な譲渡所得の特例の概要と適用要件について理解する。

■譲渡所得の特例には重複して適用できるものとできないものがある
■マイホームを売却した場合には、譲渡損失(赤字)であっても適用できる特例がある。
■当初申告で譲渡所得の特例の適用していない場合、その後の更正の請求では原則として認めらない。

■不動産を売却した際には、適用できる譲渡所得の特例がないか確認する。

1 はじめに

不動産を譲渡(売却)し、一定の要件に該当した場合には、税率が通常よりも低くなるものや譲渡所得から特別控除として一定額控除できるなど、税金の計算上有利になる特例がたくさんあります。

これらを上手く活用できれば、納める税金を少なくすることができます。

その活用には、まずはどのような譲渡所得の特例があるか、またどのような場面で適用できるかを知ることが重要です。

特例が適用できるシーンとしては主に次のような方が該当します。

✎ マイホームを売却された方

✎ マイホームの売却で損失が生じた方

✎ 公共事業(収用等)などにより、資産の売却した方

✎ 親などから相続した財産を売却した方

✎ 平成21年、平成22年に取得した土地を売却した方

今回は、譲渡所得の特例は数多くありますが、なかでも特に多く使われるもの(8つ)についてその要件、適用できるケースなどについて解説します。特例の適否を検討するため、まずは次の①から⑦までの事項を整理してみましょう。

① 売却した不動産は何か(家屋のみ・土地のみ・家屋及び土地)

② 売却した不動産の所有者は誰か

③ 売却した不動産を所有していた期間はどのくらいか

④ 誰が、どんな用途(住むため?事業のため?)で使っていたか

⑤ ④の用途で使用していた期間はどのくらいか

⑥ マイホームを売却した場合には、自宅の買換えをしているか(する予定はあるか)

⑦ 売却金額・取得費・譲渡費用はいくらか

【よく使われる譲渡所得の主な特例一覧】

【ポイント】
複数の特例の要件を満たした場合でも、重複して適用できないものもあります。
その場合には有利な方を選択して適用することになります。

また、上表にはありませんが「措法35③」と「措法39」は原則として重複して適用はできませんが、措法35③を適用した部分(「対象譲渡」といいます。)以外の部分の譲渡について、措法39を適用することができます。

2 居住用の土地建物等を売却した場合の3,000万円控除の特例(措法35条①)

居住用の家・マンション・家を取り壊した土地を売却した場合、一定の要件を満たしたとき場合には、譲渡所得から3,000万円が控除されます。


居住用の土地建物とは次の要件を満たす土地建物をいいます。

【家屋のみ又は家屋と土地等の譲渡の場合】
① 現に所有者が居住している家屋
② 所有者が居住していた家屋で、住まなくなってから3年以内に売却された家屋であること
③ 上記①又は②の家屋とともに譲渡されたその家屋の敷地

【土地等のみの譲渡である場合】
④ 取り壊された家屋の敷地で、次のいずれのイとロの要件も満たすもの
 イ 上記①又は②の家屋の敷地で、その家屋の取壊しの日から1年以内に譲渡契約が締結されたもの
 ロ その家屋の取壊し後、譲渡契約締結までの間、貸付けその他の用に供されていないもの

【適用要件】
① 売却した家屋はその所有者が住んでいる(又は住んでいた)ものであること

② 売却した家屋から転居した後、3年経過後の年末までに売却していること

③ 配偶者や親族などへ売却したものでないこと

④ 売却した年、その前年又は前々年において住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の特例を受けていないこと

⑤ 売却した年、その前年又は前々年分などにおいて、その他の譲渡所得の特例(措法35①、措法36の2、措法36の5又は措法41の5、措法41の5の2)の適用を受けていないこと

⑥ その家屋の売却について収用交換などにより代替資産などを取得した場合の特例などを受けていないこと

☞ チェックシートを使って、特例の適否を確認することができますので、是非ご活用ください。
  【国税庁HP(高松国税局)より】
  居住用の土地建物等を売却した場合の3,000万円控除の特例のチェックシート

【申告手続】
① 確定申告書の「特例適用条文]欄に「措法35条1項」と記載します。
② 確定申告書に次の書類を添付します
 ■ 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
 ■ 売却された方の住民票に記載された住所が、譲渡契約締結日の前日において、譲渡した物件の所在地と異なる場合は戸籍の附票の写しなどを添付します。

【ポイント】
☞ 3,000万円控除の特例を受けるためには、確定申告書の提出が必要です。

☞ 長期譲渡所得、短期譲渡所得のいずれに該当する場合であっても3,000万円を控除することができます。

☞ 3,000万円控除の特例の要件となる家屋について「現に所有者が居住している家屋」が対象となりますが、仕事の都合等で配偶者と離れ単身で生活している場合でその事情が解消したときに配偶者と一緒に生活するような場合には、この要件を満たしたものとして3,000万円控除の適用が可能です。

☞ 3,000万円控除は、住まなくなって3年以内に売却した家屋に適用することができます。

☞ 3,000万円控除の特例と住宅借入金等特別控除(ローン控除)は併用することはできません。
例えば、マイホームの住み替えの際に、旧住宅の売却については3,000万円控除の特例を受け、新居については住宅ローン控除を受けることはできません。どちらか有利な方を選択することになります。


☞ 自分が所有者として住んでいる家屋(敷地を含みます。)を売却することが要件となっていますので、
例えば、父から相続で実家(家屋とその敷地)を相続したが、そこに住むことなく売却した場合には所有者としてその家屋に住んでいないため、3,000万円控除の特例は適用できません。

☞ 例えば、夫婦の共有になっているマイホームを売却した場合、共有者それぞれについて要件を判断して3,000万円控除の特例を適用することができます。(それぞれに3,000万円ずつ控除可能)

 3,000万円控除の特例を適用した場合には、「優良宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率の特例(措法31の2)」の適用は受けられません

【3,000万円控除の特例の適用例と譲渡所得の計算】

2 居住用の土地建物等を売却した場合の軽減税率の特例(措法31条の3)

自分が住んでいる家と敷地を売った年の1月1日現在で、所有期間が10年を超えている場合は、「居住用の土地建物等を売却した場合の3,000万円控除」の特例を適用した後の課税長期譲渡所得金額に対して、次のとおり軽減された税率で税額を計算します。

【適用要件】
① 売却した家屋はその所有者が住んでいる(又は住んでいた)ものであるこ

② 売却した家屋から転居した後、3年経過後の年末までに売却していること

③ 配偶者や親族などへ売却したものでないこと

④ 売却した年、その前年又は前々年において住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の特例を受けていないこと

⑤ 売却した居住用財産は国内にあること

⑥ 売却した年の1月1日において所有期間が10年を超える居住用財産であること

 売却した年の前年又は前々年分において、既にこの特例(措法31の3)を受けていないこと

 その居住用財産の売却について、その他の譲渡所得の特例(所法58、措31の2、33~33の3、35の3、36の2、36の5、37、37の4、37の5、37の6、37の8又は37の9)の適用を受けていないこと

☞ チェックシートを使って、特例の適否を確認することができますので、是非ご活用ください。
  【国税庁HP(高松国税局)より】
  居住用の土地建物等を売却した場合の軽減税率の特例のチェックシート

【申告手続】
① 確定申告書の「特例適用条文]欄に「措法31条の3」と記載します。
② 確定申告書に次の書類を添付します
 ■ 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
 ■ 売却した土地・建物等の登記事項証明書
「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」又は登記事項証明書等の写しを提出することにより、登記事項証明書の原本の添付を省略することができます。
 
 ■ 売却された方の住民票に記載された住所が譲渡契約締結日の前日において、譲渡した物件の所在地と異なる場合は戸籍の附票の写し

【ポイント】
☞ 居住用の土地建物等を売却した場合の軽減税率の特例(以下措法31条の3の特例」)を受けるには、確定申告書の提出が必要です。

☞ 
自分が住んでいる家と敷地を売った年の1月1日現在で所有期間が10年を超えている場合に適用ができます。

☞ 措法31条の3の特例は、住まなくなって3年以内に売却した家屋に適用することができます。

☞ 措法31条の3の特例と住宅借入金等特別控除(ローン控除)は併用することはできません。

☞ 自分が所有者として住んでいる家屋(敷地を含みます。)を売却することが要件となっていますので、
例えば、父から相続で実家(家屋とその敷地)を相続したが、そこに住むことなく売却した場合には所有者としてその家屋に住んでいないため、この特例は適用できません。

☞ 例えば、夫婦の共有になっているマイホームを売却した場合、共有者それぞれについて要件を判断して特例を適用することができます。(税額計算においてそれぞれに軽減税率を適用)

 売却した前年、前々年に既に3,000万円控除を適用していた場合であっても31条の3の特例は適用できます。
  ※3,000万円控除については、売却した前年、前々年に既に3,000万円控除を適用していた場合には適用できません。

☞ 措法31の3の特例の適用要件に「登記事項証明書」の添付が要件とされているため、未登記の建物についてはこの特例は適用できないものと考えられます。

 

居住用の土地建物等を売却した場合の軽減税率の特例の具体例

3 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41条の5)

売却した年の1月1日現在で、所有期間が5年を超えるマイホーム(譲渡資産)の譲渡損失が生じた場合には、マイホームを売却した年の前年から翌年までの3年間に新たにマイホーム(買換資産)を取得し、年末においてその新たなマイホームの取得に係る住宅ローン残高があるなどの、次の一定の要件に該当する場合には、譲渡資産の売却の際に生じた損失金額をその年分の他の所得(例えば給与所得など)と相殺(「損益通算」といいます。)することができます。

【適用要件】
居住用の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の特例を受ける場合には、次の1から3の要件を満たす必要があります。
また、繰越控除の特例を適用する場合には、次の1から4の要件を満たす必要があります。

1 譲渡資産に関する要件(損益通算及び繰越控除の特例に共通する要件)
① 売却した年の1月1日における所有期間がともに5年を超える家屋及び土地等の譲渡であること
② 配偶者や親族などへ売却したものでないこと
③ 贈与又は出資による譲渡でないこと
④ 売却した家屋又は土地等が「居住用の土地建物等を売却した場合の3,000万円控除の特例」の適用要件を満たす家屋又は土地等であること

 買換資産に関する要件(損益通算及び繰越控除の特例に共通する要件)】
① 売却の日の属する年の前年1月1日から翌年12月31日までの間の取得であること 
② 売却した人の居住用の家屋又はその敷地等であること(ただし、国内にあるものに限る)
③ 買換家屋の床面積のうち、居住の用に供する部分の床面積が50㎡以上であること
④ 買換資産にその取得の日の属する年の翌年12月31日までの間に居住すること
⑤ 買換資産を住宅ローン等(償還期間が10年以上)により取得していること
⑥ 買換資産を取得した日の属する年の12月31日において買換資産に係る住宅借入金等の金額を有していること
⑦ 贈与又は代物弁済(金銭債務の弁済に代えてするものに限る)による取得でないこと

【3 その他の要件(損益通算及び繰越控除の特例に共通する要件)
① 売却の年の前年又は前々年において、既にその他の譲渡所得の特例(措法31条の3、措法35①、措法36の2、措法36の5)の適用を受けていないこと
② この特例を受ける年又はその年の前年以前3年内における資産の譲渡について、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例(措法41条の5の2)」の適用を受けないこと又は受けていないこと
③ この特例を受ける年の前年以前3年以内の年において生じた他の居住用財産の譲渡損失の金額について、この特例の適用を受けていないこと

譲渡資産の売却の際に生じた損失金額を、その年分で相殺(損益通算)できずに損失が残った場合には一定の要件の下でその譲渡の年の翌年以後3年間繰り越すことができ、各年分の所得から控除することができます。これを繰越控除の特例といいます。

4 繰越控除の特例要件
① 繰越控除の特例の適用を受けようとする年の前年以前3年内の年において生じた損益通算後の譲渡損失の金額(繰越控除の特例の適用を受けて前年以前の年において控除されたものを除く。)がある場合で、繰越控除の特例の適用を受けようとする年において次のイ及びロの要件を満たすこと
 イ 繰越控除をする年の12月31日において買換資産の住宅借入金等が残っていること
 ロ 繰越控除をする年分の合計所得金額が3,000万円以下であること

② 譲渡損失が発生した年分について次イからロまでの書類を添付して確定申告期間内に確定申告を行っていること
 イ 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書《確定申告書付表》
 ロ 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書《租税特別措置法第41条の5用》
 ハ 譲渡資産の登記事項証明書等(※1)(所有期間が譲渡の年の1月1日において5年超であることを明らかにするもの)
 ニ 譲渡者の住民票に記載された住所が譲渡契約締結日の前日において譲渡資産の所在地と異なる場合には戸籍の附票の写し
  買換資産の登記事項証明書(※1)、売買契約書その他の書類(※2)
 ヘ その年の12月31日現在における買換資産に係る住宅借入金等の残高証明書(※2)

※1「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」又は登記事項証明書等の写しを提出することにより、登記事項証明書の原本の添付を省略することができます。
※2 譲渡した翌年中に買換資産の取得をした場合は、取得した年の翌年の確定申告書の提出期限までに提出することが必要です。

③ その後において連続して確定申告書を提出していること

【譲渡損失が生じた年分の申告手続等】
① 確定申告書の「特例適用条文]欄に「措法41条の5・1項」と記載します。
② 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書《確定申告書付表》(居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)を提出します。
③ 確定申告書に次のイからホまでの書類を添付します。 
 イ 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書【租税特別措置法第41条の5用】
 ロ 譲渡資産の登記事項証明書等(※1)(所有期間が譲渡の年の1月1日において5年超であることを明らかにするもの)  
 ハ 譲渡者の住民票に記載された住所が譲渡契約締結日の前日において、譲渡資産の所在地と異なる場合には戸籍の附票の写し 
 ニ 買換資産の登記事項証明書(※1)、売買契約書その他の書類(※2) 
 ホ その年の12月31日現在における買換資産に係る住宅借入金等の残高証明書(※2)

※1「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」又は登記事項証明書等の写しを提出することにより、登記事項証明書の原本の添付を省略することができます。
※2 譲渡した翌年中に買換資産の取得をした場合は、取得した年の翌年の確定申告書の提出期限までに提出することが必要です。

【繰越控除の特例の適用を受ける年分の申告手続等】
① その年において控除すべき損益通算後の譲渡損失の金額及びその金額の計算の基礎その他参考となるべき事項を記載した明細書 
② 控除を受けようとする年の12月31日現在における買換資産に係る住宅借入金等の残高証明書

☞ こちらのチェックシートを使って、特例に該当するかを確認することができます。
 【国税庁HP(名古屋国税局)より】
 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例のチェックシート(令和4年分)

【ポイント】
☞ 譲渡損失を繰り越す場合は、譲渡損失が発生する年分について、確定申告書を申告期限内に提出しなければなりません。(期限後であっても損益通算は適用可能

☞ 繰越控除の適用を受けるためには、翌年以降も連続して確定申告書を提出する必要があります。

☞ 損益通算後の譲渡損失の金額は、譲渡した土地等の面積が500㎡を超える場合には500㎡までの部分に限ります。

 合計所得金額が3,000万円以下の所得要件は繰越控除をする年分における要件となっているため、譲渡損失の金額が生じた年分において合計所得金額が3,000万円を超える場合であっても損益通算の特例は適用可能です。

 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例と住宅ローン控除は併用可能であるため、前に住んでいた家屋等の譲渡における譲渡損失についてはこの当該特例を適用し、新しくローンで購入したマイホームについてはローン控除を適用することができます。 

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の具体例

4 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41条の5の2)

売却した年の1月1日現在で、所有期間が5年を超えるマイホーム(譲渡資産)の譲渡損失が生じ、マイホームの譲渡契約をした日の前日において住宅ローン残高があるマイホームを売却したなど一定の要件に該当する場合には、そのマイホームの売却の際の損失(住宅ローン残高からマイホームの売却額を控除した残額を限度とします。)の金額について、その年分の他の所得(例えば給与所得など)と相殺(「損益通算」といいます。)することができます。

また、その損失が発生した年で損益通算しきれなかった損失金額がある場合には、その年の翌年以後3年内の各年分の所得から繰越控除することができます。


【適用要件】
居住用の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の特例を受ける場合には、次の1から3の要件を満たす必要があります。
また、繰越控除の特例を適用する場合には、次の1から4の要件を満たす必要があります。

1 譲渡資産に関する要件(損益通算及び繰越控除の特例に共通する要件)
① 売却した年の1月1日における所有期間がともに5年を超える家屋及び土地等の譲渡であること
② 配偶者や親族などへ売却したものでないこと
③ 贈与又は出資による譲渡でないこと
④ 売却した家屋又は土地等が「居住用の土地建物等を売却した場合の3,000万円控除の特例」の適用要件を満たす家屋又は土地等であること

⑤ その譲渡に係る契約を締結した日の前日においてその譲渡資産に係る一定の住宅借入金等の金額を有していること 
⑥ その譲渡に係る契約を締結した日の前日におけるその譲渡資産に係る住宅借入金等の金額が当該譲渡資産の譲渡価額を上回ること
⑦ 売却の年の前年又は前々年において、既に他の居住用財産の譲渡に係る特例(措法31条の3、措法35①、措法36の2、措法36の5)の適用を受けていないこと
⑧ この特例を受ける年又はその年の前年以前3年内における資産の譲渡について、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41条の5)」の適用を受けないこと又は受けていないこと
⑨ この特例を受ける年の前年以前3年以内の年において生じた他の居住用財産の譲渡損失の金額についてこの特例の適用を受けていないこと

譲渡資産の売却の際に生じた損失金額を、その年分で相殺(損益通算)できずに損失が残った場合には一定の要件の下でその譲渡の年の翌年以後3年間繰り越すことができ、各年分の所得から控除することができます。これを繰越控除の特例といいます。

 繰越控除の要件】
① 繰越控除の特例の適用を受けようとする年の前年以前3年内の年において生じた損益通算後の譲渡損失の金額(繰越控除の特例の適用を受けて前年以前の年において控除されたものを除く。)がある場合で、繰越控除の特例の適用を受けようとする年において繰越控除をする年分の合計所得金額が3,000万円以下であること

② 譲渡損失が発生した年分について次イからロまでの書類を添付して確定申告期間内に確定申告を行っていること
 イ 特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書《確定申告書付表》
 ロ 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書《租税特別措置法第41条の5の2用》
 ハ 譲渡資産の登記事項証明書等(※)(所有期間が譲渡の年の1月1日において5年超であることを明らかにするもの)
 ニ 譲渡者の住民票に記載された住所が譲渡契約締結日の前日において譲渡資産の所在地と異なる場合には戸籍の附票の写し
 ホ 譲渡に係る契約を締結した日の前日における譲渡資産に係る住宅借入金等の残高証明書

「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」又は登記事項証明書等の写しを提出することにより、登記事項証明書の原本の添付を省略することができます。

③ その後において連続して確定申告書を提出していること

【譲渡損失が生じた年分の申告手続等】
① 確定申告書の「特例適用条文]欄に「措法41条の5の2・1項」と記載します。
② 特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書《確定申告書付表》(特定居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)を提出します。
③ 確定申告書に次のイからホまでの書類を添付します。 
イ 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書【租税特別措置法第41条の5の2用】
ロ 譲渡資産の登記事項証明書等(※)(所有期間が譲渡の年の1月1日において5年超であることを明らかにするもの)  
ハ 譲渡者の住民票に記載された住所が譲渡契約締結日の前日において、譲渡資産の所在地と異なる場合には戸籍の附票の写し 
ホ 譲渡に係る契約を締結した日の前日における譲渡資産に係る住宅借入金等の残高証明書 

「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」又は登記事項証明書等の写しを提出することにより、登記事項証明書の原本の添付を省略することができます。

【繰越控除の特例の適用を受ける年分の申告手続等】
① その年において控除すべき損益通算後の譲渡損失の金額及びその金額の計算の基礎その他参考となるべき事項を記載した明細書 

 

【ポイント】
☞ 譲渡損失を繰り越す場合は、譲渡損失が発生する年分について、確定申告書を申告期限内に提出しなければなりません。(期限後であっても損益通算は適用可能

☞ 繰越控除の適用を受けるためには、翌年以降も連続して確定申告書を提出する必要があります。

 合計所得金額が3,000万円以下の所得要件は繰越控除をする年分における要件となっているため、譲渡損失の金額が生じた年分において合計所得金額が3,000万円を超える場合であっても損益通算の特例は適用可能です。 

☞ こちらのチェックシートを使って、特例に該当するかを確認することができます。
【国税庁HP(名古屋国税局)より】 
 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例のチェックシート(令和4年分)

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の具体例

【参考:居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41条の5)と特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41条の5の2)の相違点とは??】

5 収用等により土地建物等を売却した場合の5,000万円控除の特例(措法33条の4)

国や地方公共団体の公共事業などのために使われることを目的として土地等を譲渡した場合で、その譲渡が事業施行者等から最初に買取り等の申出があった日から6か月以内に行われている場合など、一定の要件を満たすときは、長期譲渡所得又は短期譲渡所得のどちらに該当する場合でも、課税譲渡所得金額を計算する上で最高5,000万円が控除されます。

【適用要件】
① 資産の譲渡が次のいずれかに該当すること
 イ 資産が土地収用法等の規定により収用された場合
 ロ 収用されることを前提として資産が買い取られた場合
 ハ 土地等につき土地区画整理事業等が施行され、清算金を取得した場合
 ニ 土地等が上記イからハまでに該当することとなったことに伴い、その土地上にある資産の取壊し又は除去に係る対価(移転補償金等
  の名義で交付を受けるもので対価補償金として取り扱うことができるものを含む。)又は損失補償金を取得した場合
 ホ その他の法律の規定に基づき資産が買い取られ、権利が消滅し、その対価や補償金等を取得する場合

② 譲渡資産が棚卸資産又はこれに準ずる資産でないこと

③ 最初に買取り等の申出があった日から6か月を経過した日までに資産を譲渡していること

④ 同一事業のために前年以前に資産を譲渡していないこと

⑤ 最初に買取りの申出を受けた者が譲渡したものであること

⑥ 譲渡者がその年中に収用交換等に伴い代替資産を取得した場合の特例(措法33、33の2)の適用を受けないこと

 その譲渡について、居住用財産の譲渡に係る特例(措法35、措法35の2、措法35の3、措法36の2、措法36の5)の適用を受けないこと(有利な方を選択して適用)

☞ こちらのチェックシートを使って、特例に該当するかを確認することができます。
 【国税庁HP(名古屋国税局)より】
  収用等により土地建物等を売却した場合の5,000万円控除の特例のチェックシート(令和4年分)

【申告手続】
① 確定申告書の「特例適用条文]欄に「措法33条の4」と記載します。
② 確定申告書に次の書類を添付します
 ■ 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
 ■ 公共事業用資産の買取り等の申出証明書
 ■ 公共事業用資産の買取り等の証明書
 ■ 収用証明書等
 ■ 経費補償金等の課税延期をする場合にはその旨の申出書

【ポイント】
☞ 最初に買取り等の申出があった日から6か月以内に譲渡された場合に限り、5,000万円控除の特例の適用があります。よって、譲渡するタイミングに注意してください。

☞ この特例を適用した譲渡については、「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率の特例(措法31の2)」の適用はできません。

☞ 5,000万円控除と住宅ローン控除の重複適用は可能ですが、住宅ローン控除には所得制限(2,000万円以下)である点に注意してください。

☞ 収用による譲渡所得が5,000万円未満である場合で、他に給与などの所得があるときは他の所得の状況のみで確定申告書の提出を要するか否かを判定します。したがって、例えば収用による譲渡所得3,000万円と給与所得1,000万円ある場合で、給与所得について勤務先で年末調整されているのであれば給与所得の申告は不要なことから、収用による譲渡所得についても確定申告の必要はありません。

<収用等により土地建物等を売却した場合の5,000万円控除の特例の具体例>

6 相続人が居住していた土地建物等を売却した場合の3,000万円控除の特例(措法35③)

【参考:本特例のイメージ】

                           (出典:国土交通省HP)

被相続人が1人で住んでいた家(現在、空き家)を相続した相続人が、

イ 家屋を取壊して敷地のみを売却した場合
または
ロ 家屋(空き家)の耐震リフォームを行い、その家屋と敷地を売却した場合

には、その譲渡所得から3,000万円を控除することができます。
ただし、上記①または②のどちらで売却するかによって、それぞれで特例の適用要件が異なりますので注意が必要です。

なお、被相続人が相続開始直前に一定の老人ホームに入居していた場合にも特例の適用を受けることができます。

【適用要件】
上記「イ 家屋を取壊して敷地のみを売却した場合」と「ロ 家屋(空き家)の耐震リフォームを行い、その家屋と敷地を売却した場合」では、適用要件が一部異なるものもあります。

【1 上記イ及びロの共通する要件
① 相続開始前に被相続人が生活するのに使用していた家屋(以下「被相続人居住用家屋」)及びその敷地等であること

② 平成28年4月1日から令和5年12月31日までに上記①の家屋及びその敷地を売却したこと

③ 被相続人居住用家屋及びその敷地等の両方を相続又は遺贈によりその被相続人から取得していること
  例えば家屋のみ、又は家屋の敷地のみを相続した場合には、この特例を受けることはできません。

④ 相続等により取得した人は、被相続人居住用家屋及びその敷地の前所有者(被相続人)の相続人又は包括受遺者であること

⑤ 被相続人居住用家屋又はその敷地の一部の売却において、既にこの特例の適用を受けていないこと

⑥ 相続等により取得した被相続人居住用家屋は「昭和56年5月31日以前に建築されたもの」であること

⑦ 相続等により取得した被相続人居住用家屋はマンションや二世帯住宅などの区分所有登記がされた建物ではないこと

⑧ 被相続人は相続開始の直前においてその家屋に一人で住んでいたこと

⑨ 配偶者・直系血族・生計を一にする親族など特別な関係がある者へ売却したものでないこと

⑩ 被相続入居住用家屋又はその敷地の売却について、平成28年4月1日以後に行われ、かつ相続開始のあった日から3年が経過後の年末までに売却していること

⑪ 対象譲渡の売却額が1億円を超えていないこと

⑫ 対象譲渡の対価の額と「適用前譲渡」及び「適用後譲渡」の対価の額の合計額が1億円を超えないこと

⑬ 「相続財産を売却した場合の相続税額の取得費加算の特例(措法39))」や「交換又は買換え等の特例(所法58、措法33~33の4、措法37、措法37の4、措法37の8)」の適用を受けないこと

2 「イ 家屋を取壊して敷地のみを売却した場合」の適用要件
 (※この適用要件を確認する前に、上記共通する要件を満たしていることが必要です。)

⑭ 被相続人居住用家屋の全てを譲渡までに取り壊していること
  売主、買主のどちらが取り壊しを行っても構いませんが、譲渡(引渡し)までに取壊しておく必要があります。

⑮ その家屋の敷地の全てについて、相続開始の時から売却時まで「事業の用」「貸付の用」「居住の用」に供されていないこと

⑯ 家屋の取壊し時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていないこと

3 「ロ 家屋(空き家)の耐震リフォームを行い、その家屋と敷地を売却した場合」の適用要件
 (※この適用要件を確認する前に、上記共通する要件を満たしていることが必要です。)

⑰ 家屋とともにその敷地を譲渡していること

⑱ 相続等により取得した家屋及びその敷地はいずれも相続開始の時から売却時まで、「事業の用」「貸付の用」「居住の用」に供されていないこと

⑲ その譲渡資産である家屋は譲渡の時において耐震基準に適合していること

☞ こちらのチェックシートを使って、特例に該当するかを確認することができます。
 【国税庁HP(名古屋国税局)より】
  相続人が居住していた土地建物等を売却した場合の3,000万円控除の特例(措法35③)(令和4年分)

【申告手続】
① 確定申告書の「特例適用条文]欄に「措法35条3項」と記載します。
② 確定申告書に次の書類を添付します
 ■ 譲渡所得の内訳書(1面~3面及び5面を記載)(確定申告書付表兼計算明細書)
 ■ 被相続人居住用家屋及びその敷地の登記事項証明書等で、次の内容を明らかにする書類(※)
  ☞ 譲渡をした者がその被相続人居住用家屋及びその敷地等を相続等により取得したこと
  ☞ 被相続人居住用家屋に係る一定の要件(建築年度、区分所有建物以外)を充足すること
 ■ 売買契約書の写し等で、譲渡対価の額が1億円以下であることを明らかにする書類
 ■ 被相続人居住用家屋の所在地の市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書

【被相続人居住用家屋等確認書って何??】
被相続人居住用家屋等確認書ってあまり聞き慣れないものかと思いますが、これは売却した不動産のある市役所などに亡くなった方が住んでいた家屋について「被相続人が独りで居住していた」及び「相続開始後においては未利用だった」ことを証明してもらうものです。
この証明は、次の①から⑦の書類を売却した家屋等のある市役所等に持参して手続きをする必要があります。
空き家を取得した人の住所地の市町村役場ではないのでくれぐれも注意してください。

 ① 被相続人居住用家屋等確認申請書 (→国土交通省のHPから入手できます。)
 ➁ 被相続人の除票住民票の写し (→被相続人が住んでいた市町村役場で入手できます。)
 ③ 被相続人居住用家屋の取壊し、除却または滅失時の相続人の住民票の写し (→相続人が住んでいた市役所等で入手できます。)
 ④ 家屋又はその敷地等の売買契約書の写し等 (→売買契約時に仲介業者などから入手できます。)
 ⑤ 閉鎖事項証明書の写し (→法務局で入手できます。)
 ⑥ 電気、水道、ガスの使用中止日(閉栓日、契約廃止日)が確認できる書類
 ⑦ その家屋の取壊した時から売却までの被相続人居住用家屋の敷地等の使用状況が分かる写真

被相続人居住用家屋等確認書の申請に際しては、原則として市区町村の担当窓口に直接訪問して提出するルールになっている自治体がほとんどですが、遠方の場合には郵送提出に対応してくれることもありますので、行く前に電話で確認してみるといいかもしれません。

「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」又は登記事項証明書等の写しを提出することにより、登記事項証明書の原本の添付を省略することができます。

被相続人居住用家屋とともに譲渡する場合のみ
 ■ 建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関又は住宅瑕疵担保責任保険法人が発行する「耐震基準適合証明書」又は登録住宅性能評価機関が発行する[建設住宅性能評価書の写し](譲渡の日前2年以内に評価されたものに限ります。)

【ポイント】
☞ この特例の対象となる「被相続人居住用家屋」は次のような家屋をいいます。
 (1)相続開始の直前において被相続人が居住していた家屋
 (2)昭和56年5月31日以が前に建築された家屋
 (3)区分所有登記(マンションなど)がされていない家屋
 (4)相続開始直前において被相続人以外に居住していた人がいなかった家屋
 (5)相続時から売却時まで「事業の用」「貸付の用」「居住の用」に供されていない家屋


☞ 被相続人が要介護認定等を受け、亡くなる直前に一定の要件を満たす老人ホーム等に入居していた場合にもこの特例の適用が可能です。

☞ 被相続人居住用家屋等は、相続開始があった日から3年後の年末までに売却する必要があります。

☞ 相続した家屋に「母屋」とは別に「離れ」がある場合、この特例は被相続人が主として居住用に使用していた家屋に限られるため、母屋とは別の建築物(離れ、倉庫、車庫等)及びその敷地に対応する部分については、仮に母屋と一体利用していたとしても、特例の対象からは除かれます。

☞ 家屋を取壊さず、家屋とその敷地を売却する場合には、その家屋が次の(1)又は(2)の現行の耐震基準に適用するものであるかをしっかりと確認しましょう。
 (1)耐震基準適合証明書により証明されているか
 (2)建設住宅性能評価書により耐震等級に係る評価が「等級1」「等級2」「等級3」と評価されているか

☞ この特例を適用する場合、次のとおり他の譲渡所得の特例と併用できるものとできないものがあります。

適用関係を図にすると次のとおりとなります

7 相続財産を売却した場合の相続税額の取得費加算の特例(措法39)

相続や遺贈によって取得した財産等を相続開始があった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合には、通常の取得費にその相続に係る相続税額のうち一定の金額を加算することができます。

【取得費に加算される金額】

【代償金を支払って取得した相続財産を譲渡した場合】

代償金を支払って取得した相続財産を譲渡した場合や遺留分侵害額の支払い請求に基づき、遺留分侵害額に相当する金銭を支払った場合の取得費に加算される金額については、上記の算式によらずに次の計算式で加算される金額を計算します。

【適用要件】
① 相続又は遺贈(死因贈与を含む。)により取得した財産等を譲渡したこと

② その譲渡が、相続開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内に行われていること

③ 譲渡の年の12月31日又は相続税の申告期限のいずれか遅い日までに相続税額が確定していること

【申告手続】
① 確定申告書の「特例適用条文」欄に「措法39条」と記載します。
② 確定申告書に次の書類を添付します
 ■ 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
 ■ 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書

【ポイント】
☞ 相続開始3年以内に贈与加算された財産(相法19)又は相続時精算課税制度を適用したことによって、相続税の課税価格に算入された財産(相法21の14~18)を譲渡した場合についても、この特例を適用することができます。

☞ 相続又は遺贈によって取得した財産には、土地等の不動産に限らず、株式等であっても適用が可能です。

☞ こちらのチェックシートを使って、特例に該当するかを確認することができます。
 【国税庁HP(名古屋国税局)より】
  相続財産を売却した場合の相続税額の取得費加算の特例のチェックシート(措法39)(令和4年分)

 【相続財産を売却した場合の相続税額の取得費加算の特例の具体例】

 特定期間(平成21年及び平成22年)に取得した土地等を譲渡した場合の1,000万円控除の特例(措法35の2)

平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得した一定の土地等を譲渡した場合に、長期譲渡所得の金額の計算上、最高1,000万円まで特別控除することができます。

【適用要件】
① 譲渡した土地等は、平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得したもので、国内にある土地又は土地の上にある権利であること

② 配偶者や親族などから取得したものでないこと

③ 相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済及び所有権移転外リース取引により取得したものでないこと

④ その譲渡について、譲渡所得のその他特例(所法58、措法33の4、措法34~35、措法37の5及び措法37の6)の適用を受けないこと

⑤ その年中に譲渡した土地等の全部又は一部について、譲渡所得のその他の特例(措法33~33の3、措法36の2、措法36の5、措法37、措法37の4若しくは措法37の8)の適用を受けないこと

【申告手続】
① 確定申告書の「特例適用条文」欄に「措法35条の2」と記載します。
② 確定申告書に次の書類を添付します
 ■ 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
 ■ 譲渡した土地等に係る登記事項証明書、売買契約書の写しその他の書類で「その土地等が平成21年1月1 日から平成22年12月31日までの間に取得されたこと」を明らかにする書類

【ポイント】
☞ 譲渡した土地の用途は問われないため、例えば賃貸マンションの敷地や駐車場、空き地であっても適用することができます。
  ただし、その適用は土地等に限られるため、建物や建物付属設備、構築物を売却した場合には適用できません。
☞ 土地及び建物を一括して売却した場合には、その売却による譲渡所得のうち、土地の売却に対応する部分についてのみこの特例の適用があります。

 

☞ こちらのチェックシートを使って、特例に該当するかを確認することができます。 【国税庁HP(名古屋国税局)より】
特定期間(平成21年及び平成22年)に取得した土地等を譲渡した場合の1,000万円控除の特例のチェックシート(令和4年分)

【特定期間(平成21年及び平成22年)に取得した土地等を譲渡した場合の1,000万円控除の特例の具体例】

 

9 譲渡所得の特例は更正の請求では原則として認められない

譲渡所得の特例を適用するには「当初申告要件」というものが存在します。

この当初申告要件は”最初に提出した申告書でその特例を使っている限りにおいて適用を認める”というものです。

例えば、居住用の財産を譲渡した場合の「居住用財産の3,000万円特別控除の特例」が適用できるにもかかわらず、確定申告では適用せずに税務署に申告書を提出し、納税までしたとします。

後日になって、実は3,000万円控除の特例が適用できたと気づき、税務署に納めすぎた税金を返してくださいという手続き(この手続きを「更正の請求」といいます。)をおこなっても、当初申告の際に特例を適用していないため、認められません。

つまり、3,000万円控除の特例要件を満たしているにもかかわらず、適用できないということになります

もちろん、税務署は事前に「あなたは特例を適用できる人です」と親切には教えてくれません。

したがって、特例を適用せずに一度確定申告書を提出していると、その後に修正申告や更正の請求で特例を適用することは原則として認められませんので、はじめに申告する際に、税理士に依頼するなどして適用できる特例がないかどうかを検討しましょう。

なお、確定申告期間中に申告書を提出せず、期限が過ぎてから提出する場合には「最初に提出した申告書」に該当しますので、特例の適用は可能です。

10 まとめ

譲渡所得の主な特例について解説しました。

不動産を売却した際には、売却前の不動産の用途によっては譲渡所得の特例が適用でき、税金が低く抑えられることがありますので、その特例の要件等についてはしっかりと確認する必要があります。

注意点としては、譲渡所得の特例は「当初申告要件」がありますので、最初に提出する確定申告書で適用していないと、その後の修正申告や構成の請求では原則として適用できません。

私が税務署に勤務していた時にも、確定申告後に自分が居住用財産の譲渡の特例(3,000万円の特別控除)が受けられることを知った方が、特例を適用するため申告をやり直したいとして手続き(「更正の請求」といいます。)をしたところ、それが認められないという事例を数多く見てきました。確定申告の時にこの特例を適用していれば、譲渡所得が最大で3,000万円控除できますので、最大限控除したとすると長期譲渡所得の場合で所得税額が約450万円節税できたことになり、納税者にとっては大きな経済的な損失を被ったことになります。

不動産を売却された方は、ご自身が使える特例については確定申告前に必ず調べておきましょう。

ご自身で調べる時間がない、または専門家に確認してほしいという方は当事務所にお問合せください。